アリババは白いシーツの波に埋もれる身を震わせる。伸びやかな四肢をぴん、と張る彼に、どこか楽しそうな声が落ちてきた。


「君はいつまで経っても慣れないね」


鎖骨の辺りを食んでいた男が囁く。その声は明らかに笑いを含んでいて。アリババは羞恥に瞳を潤ませながら、意地の悪い相手に小さく睨みをきかせた。


「こ、なの…慣れるわけ、ッン、ん」


アリババが続けようとした言葉はシンドバッドの唇に飲み込まれた。ノックするかのように唇の狭間を舌で突付かれ、べろりと舐め辿られる。ゾクゾクと背中に走る痺れを感じながら、アリババはおずおずと唇を開き、相手の肉厚な舌を受け入れた。


「ん…ッふ、ンン…っ」


室内に響くぴちゃぴちゃと濡れた音は相手に蹂躙されている現実を自身に突き付けているかのようで。じわりと熱が上るのを感じていると、急に喉奥にまで舌をねじ込まれた。


「ふ、ッ…!?ん、ンン…ッ!」
「情事の最中に考え事とは感心しないな」


すぐに舌は離れていったが、不意打ちで行われたソレに呼吸が落ち着かない。上に視線を向けると緩く笑むシンドバッドがいて。言葉とは裏腹に余裕たっぷりに口角を上げている姿に、アリババは胸が疼くのを感じた。

(嗚呼…やっぱり格好良い、なぁ)

ぼんやりとシンドバッドの顔を見詰めていると再び唇が塞がれた。豊潤に唾液を纏った男のそれは温かく、そして巧みで。


「ぁ、ん…ッ、ふ、」


時間を掛けて侵食された口内はすっかり溶け、唇はねっとりと溢れた唾液に濡れていた。最後に小さくちゅ、と音を立てて離されたが、アリババは喘ぎに似た呼吸を繰り返すばかり。

赤く染まったアリババの頬をスルリとシンドバッドが撫で、そのまま唇端に溢れた透明な体液を拭い取る。


「…可愛いね、本当に」


君は可愛いと甘く紡ぐシンドバッドはアリババの髪の毛を掻きあげ、そうして耳元に舌を這わせた。そのまま耳朶を口に含むと、アリババは泣きそうな堪らない声を上げる。


「ぅ、うーッ…ひ、ゃ、」
「次は此処だね」


そう言ってシンドバッドの手はスルスルとアリババの胸元を探り、指先に引っかかった突起を躊躇いなく摘んだ。


「、ッぁ!?」


びくりと身体を跳ねさせるアリババを寝台に押さえつけながら、シンドバッドは指の腹でじっとりとその粒を押し撫でていく。


「ぁ、やだ…ゃ、ひ、んッ」


肉粒から根を張った快楽神経がじくじくとアリババを苛んでいく。嫌だ嫌だと首を振るアリババを無視して、シンドバッドの指はただひたすらその芽を愛おしむ。


「も、ゃ…そこ、やです…、っ」


散々指でこね回され、刺激されたそこは必要以上に過敏になっていて、ぐりぐりと押し潰される度に鋭い快感がアリババを貫く。そこだけでも頭がおかしくなってしまいそうなのに、シンドバッドは更に下半身にまで手を伸ばして。何も隠すもののない下肢は僅かにも拒むことが出来ず、そのまま大きな手に遠慮無く擦られた。


「ッ、ひ…っ!やぁああッ」


長い間胸元を弄られ続けた所為で、アリババの性器は既に濡れ染まっている。其処をぐちゅりと無遠慮に攻められアリババは高い啼き声を上げた。


「ゃ、やだぁ…っ!シ、ドバッドさ…、ぁ」
「相変わらず敏感だね。…だが、まだいけるだろう?」


酷薄なまでにそう告げ、シンドバッドはアリババの性器を口に含んだ。じゅるるっ、とあからさまな音を立ててペニスをしゃぶられ、アリババは声も出せずに背を反らした。身体の痙攣が止まらないアリババを目に捉えつつ、シンドバッドはその全てを含んで欲液を舐め取っていく。そうして唇を一旦離し、パクパクと口を開閉させる先端を舌を尖らせ抉った。


「ひ、ぎ…ィッ!」


死にそうな射精感が尿道を焼いて、アリババは喉を引き攣らせながら涙を零した。シンドバッドは目を細めて身悶えるアリババを見る。そうしてしばらくその様子を眺めてから浮き上がった裏筋を親指で擦り、軽く先端に歯を立てた。


「ッ、!ぃ…、ぁぁあああ!!」


内股をガクガクと揺らしながら達したアリババ。シンドバッドは吐き出されたその熱を全て飲み干し唇を拭った。


「ぁ、…ぁ」
「アリババくん?」


ぽろぽろと涙を零すアリババの目は焦点を結んでおらず、シンドバッドはやり過ぎたかと苦笑した。しかしシンドバッドと身体を重ねる時には十中八九こうなってしまうため、シンドバッドは心の中で謝罪しつつも行為をとり止めることはない。

(俺もまだ若いな)

ふぅ、と軽く息を吐いてアリババの後孔に指を寄せる。
いつもやり過ぎだとは感じるが、アリババを前にすると今まで培ってきた理性なんて途端に役に立たない代物になる。可愛く、そしていやらしい恋人。狂わされたのはこちらの方だ。シンドバッドはアリババの目元にキスを落とし、小さく笑った。



何度か指を前後させるが滑りが足りないようだ。シンドバッドは身体を下げ、閉じた蕾に自らの顔を寄せた。そして舌を伸ばして唾液を塗り付けていく。それによって覚醒したアリババは、後孔に触れる熱くぬめる感触の正体に気付いた瞬間短い悲鳴を上げた。


「ひッ?!…ッや、やだ、シンドバッドさ、…そこ汚ッ、ぁ」


だが抗議を篭めたその言葉は途中で途切れることとなる。唾液の滑りを受けた舌が後孔へと侵入した為だ。狭い場所をこじ開けてくるその質量と熱を感じて、かぁっと熱いものがアリババの背中に走る。


「…もういいかな。指、挿れるよ」
「ぅ、ぅ…っは、い」


ひとしきり舐め、唾液を注いだシンドバッドはややしてゆっくりと唇を離し、そうして欲にギラつく瞳をアリババに向けた。その瞳に射抜かれたアリババは小さいながらも同意の声を上げ、期待に疼く身体を感じつつギュッと目を閉じた。そうして舌が取り去られた場所に指が侵入する。しっかりと節を持った男の指…それが埋め込まれていく感覚にアリババは知らず泣きそうになる。何度か擦られては指が増やされ、どんどん圧を増すソレを意識しない訳にもいかず。その所為で締め付けて狭くなる内部を、硬い指が割り開いていく。


「ぃ、…あッ!?」


不意に指が根元まで押し込まれ、急激な深い侵略に息が詰まる。束にされた指の太さが入り口を開き、内部の前立腺を的確に捉えた。そこを指の腹に散々になぶられ、アリババは与えられる酷い快楽に何度も身体を跳ね上げる。


「ひ、ィ…はッ、ぁ…あーッ!」


そのうち濃厚な悦楽にアリババの表情は溶け落ち、それを目の前で見ていたシンドバッドは軽く舌を打った。この子はどこまで自身を煽ってくれるのか。苦く口元を歪めたシンドバッドは、挿入した指をぐるりと大きく回して解れたのを確認し、そうして勢い良く後孔から引き抜いた。


「っは、ァ…ッ!」


堪らないのはアリババで、その刺激によって軽くイッた性器がビクつく。中途半端な絶頂感は逆にアリババを追い詰め、脳髄をとろかせていく。


「ぁ、ぁ…シンドバッドさ…シンドバッドさん、」


水分過多な瞳を揺らしつつ、子どものようにシンドバッドの名を呼ぶアリババを一度抱き締めてから、シンドバッドはぐずぐずに蕩けた後孔に自身の性器を押し当てた。先ずはほんの少しだけ挿入し、そうしてゆっくりとアリババの後孔を傷付けぬよう進んでいく。だが大きな亀頭はそれだけでも酷い圧迫感を与え、アリババははくはくと口を開閉させながらそれに耐えた。


「は、…大丈夫かい?」
「ん…ぁ、はい」
「動いても平気?」


全てを埋め込み、互いに呼吸を整える。アリババが落ち着いた頃を見計らいシンドバッドは問いを落とした。それに対しアリババはこくこくと首を縦に振り、身の下に溢れる布をきつく握り締めた。その様子を捉えてからシンドバッドはアリババの腰を掴み、ゆるゆると動かし始める。


「んぁ…ッ、ぁ、あっ」


アリババは己の領域を他人に征服される感覚に言いようのない快楽を焦がしていた。ずりずりと擦られ、押し込められる長大な男根…七海の覇王と呼ばれるシンドバッド、そんな人と今繋がっているのだ。アリババはきゅっと唇を引き結び、それからシンドバッドに手を伸ばした。首に縋るように抱き付き、幼遊びのようなキスを捧ぐ。それに驚いたような顔をしたシンドバッドに微笑むと、シンドバッドは何とも言えない表情をしてから、お返しとばかりに腰を揺すってきた。


「君は全く…どれだけ俺を誘惑すれば気が済むのかな?」
「ぁ、あぁぅ…ッひ、ン」


痛痒感のある内壁をシンドバッドの性器が満たしていく。男根が滑って狭い奥まで入り込み、深い所でどくどくと脈打っている。それをいやにリアルに感じてしまい、アリババは自身の後孔がひくひくと煽動するのを止められないでいた。『犯されている』という実感に思考も中もぐずぐずに溶かされて、シンドバッドの一挙手一投足に己の総てが悦ぶ。


「ぁ、ひ…ッぁ、あっ!そ、ぁ…め、らめ…あぁぅっ」


ガツガツと速い抽挿は的確にアリババの前立腺を抉っていく。最奥に突き込まれるのも、勢いよく引き抜かれるのも、どちらも気持ちが良くて仕方がない。ひんひんと啼くアリババの腰を再度しっかりと抱え直し、シンドバッドは衰えを知らない性器を激しく中に沈める。内部の心地良い締め付けは確かにシンドバッドの余裕を削っていって…いっそ凶器とも呼べるような硬い一物でアリババを攻め立てていく。


「あッ、…っひ、ひィっ、ァ…ッ!ゃ、ァーッ!!」


そうして数度きつく捻じ込まれた後、どくんっと最奥でシンドバッドの性器が跳ねて、熱い迸りがアリババの内壁を灼いた。注がれる濃厚な液体をまるで飲み干すかのように中が蠢く。アリババは薄れる意識の端で、自身の腹をぬとりと濡らす精液に気付かない内に達していたことを知った。
…アリババは度重なる性交によって後ろだけでイけるような身体にされた。きっともうこの身はシンドバッドに触れられなければ満足に達することも出来ないだろう。けれどアリババにとってそれはこの上ない幸せで。


「シ、ドバッドさん」
「うん?」
「…すきです」
「…ああ、俺もすきだよ」








(大好き)
(大好き)

(…あいしてる)











ゆるく交わせた唇は甘く、絡ませた指は誓いだった。